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妊娠中「右向き寝の方が楽だけど…大丈夫?ダメ?」助産師が回答

妊娠中の寝方は左を下にするシムスの体位が推奨されていますが、「右を下に寝た方が楽なの…」という方もいるようです。この記事では、右向き寝のリスクの有無やその理由を解説。妊娠初期・中期・後期それぞれの寝方や仰向けやうつ伏せについても説明します。

目次
妊娠中は右向きで寝てもいいの?
右向き寝がよくないと言われる理由
なぜ右向きで寝てしまうのか
いつまでなら右向きで寝てもいい?
右向きで寝ると逆子になりやすい?
母体や胎児への影響が心配な妊婦さんへ
妊婦さんへの影響
胎児への影響
医学的エビデンスと助産師の臨床経験
初期・中期・後期|どの時期でも大丈夫?
左向きや仰向け|体勢別のメリット・デメリット
左向き
仰向け
うつ伏せ
特に妊娠後期に注意する姿勢
寝つきがよくなる体位
シムス位
セミファーラー位
快適な睡眠を目指して

※この記事は、編集部が構成のもと助産師が執筆しました。

妊娠中は右向きで寝てもいいの?

右向きで寝る妊婦

画像:右向き寝でおなかをおさえる女性(photo AC)

「妊娠中は右向きで寝たらいけない」という話を耳にしたことがありませんか?

実際のところ、右向きで寝てはいけないことはありませんが、そう言われる理由も確かにあります。

この章では、なぜ右向き寝がよくないとされのか、どうして右向きで寝てしまうのかなど、右向き寝に関するウワサについてお話します。

右向き寝がよくないと言われる理由

右側を下にして寝ると、身体の中心を通る下大静脈という大きな血管が圧迫される可能性があります。

下大静脈の血流が滞ると、胎児へ運ばれる血液量が減少し、酸素の供給や発育に影響がでるのではないかと不安視され、右向き寝はよくないと考えられるようになったといわれています。

しかし、睡眠中は無意識に寝返りをうちますし、右向き寝にもメリットがあるため、長時間でなければ過度に心配する必要はありません。

なぜ右向きで寝てしまうのか

右向きで寝てしまう理由は、無意識に右向きの方が楽だと感じるからでしょう。

右向き寝が楽だと感じる理由は以下の3つが挙げられます。

・食べ物の消化が進みやすく、胃の負担が減るため

・子宮の重みが背中や腰にかかりづらいため

・同じ体勢が続くことでキュウクツになり、無意識に体勢を変えてしまうため

このほか、妊娠中に起きやすい症状が関係する場合もあります。

妊娠初期のつわりや、妊娠中期以降の胃の圧迫で、吐き気や胃もたれの症状が出ることがあります。右向き寝は、胃から十二指腸への食べ物の移動を助け消化を促す体勢のため、楽に感じることがあるでしょう。

また、胎向(たいこう)も関係します。胎向とは、胎児の背中が母体の左右どちらにあるかを指し、一般的には母体の左側に胎児の背中があることが多いです。

母体の左側に背中があると、右向き寝のときに胎児が上になるため重さを感じにくくなります。

胎児の背中が左側

イラスト:母体の左側に胎児の背中があるイメージ(制作:salvia writer)

逆に、左を下にして寝ると、胎児が一番下にくるため重みを感じやすくなります。

母体の右側に胎児の背がある

イラスト:母体の右側に胎児の背中があるイメージ(制作:salvia writer)

いつまでなら右向きで寝てもいい?

妊娠初期から後期までの全期間、右向きで寝ても問題ありません。

ただし妊娠後期(28週以降)に入ると子宮が大きくなり、下大静脈が圧迫されやすくなります。

母体の血流を保ち、血圧低下を防ぐためにも、右向き寝ばかりにならないよう体勢を変えながら寝るのが望ましいでしょう。睡眠中は自然に寝返りをうちますので、過度に心配する必要はありません。

右向きで寝ると逆子になりやすい?

右向きで寝たからといって逆子になりやすいことはありません。

そもそも妊娠中期ごろまでは子宮のスペースにも余裕があり、胎児も小さいため、胎位が変わりやすく、逆子であることも珍しくありません。また逆子について、出産までに90%は自然に戻ると言われています。

参照:https://sakago-breechbaby.com/naoru-kakuritu/

母体や胎児への影響が心配な妊婦さんへ

不安を抱える妊婦さん

画像:不安を抱える妊婦さん(photo AC)

妊娠中に右向きで寝ることは「問題ない」とされていても、心配になる妊婦さんもいますよね。ここでは、実際にどのような影響があるのかを詳しく説明します。

妊婦さんへの影響

先述したとおり、「右向き寝」によって下大静脈が圧迫されると、結果的に心臓から全身に出ていく血液(心拍出量)も減少し、血圧が低下する可能性があります。

また、心臓に返る血流が滞ると下半身に血液がたまりやすくなる「うっ血」を起こすことがあります。その結果、腎臓に負担がかかったり、むくみや静脈瘤の原因になったりするので、適度に体勢を変えることが重要です。

胎児への影響

母体の心拍出量が減少すると、胎盤への血流も減少します。胎盤への血流が減少すると、胎児へ運ばれる酸素や栄養分も減少する可能性があります。

そのため、"理論上として"胎児が酸素不足になったり発育に影響がでたりする可能性が懸念されます。

医学的エビデンスと助産師の臨床経験

上記のように、理論的には右向き寝についてリスクや心配があるものの、危険であり避けた方がよいという研究報告はありません。

また、長年、助産師をしている中で、右向き寝が原因で胎児に影響があったりお腹の中で亡くなってしまったりといった事例もありません。自身の妊娠中でも特に気にしたことはありませんでした。

妊娠中は、胎動や尿の回数が増えることで睡眠が浅くなりやすいものです。右向き寝を気にして余計に睡眠不足になる方が、かえって妊娠生活に影響を及ぼしかねません。自分に合った、リラックスして眠れる体勢を見つけることが大切です。

初期・中期・後期|どの時期でも大丈夫?

■妊娠初期

妊娠初期は、右向き寝を含むどのような体勢で寝ても構いません。自分が快適だと思う体勢で休みましょう。

■妊娠中期

お腹が少しずつ目立ち始め、人によっては重たさを感じるようになります。

この時期も右向き寝を含むどのような体勢で寝ても構いません。ただし、お腹が大きくなることでうつ伏せ寝は物理的に難しくなってくるでしょう。

好きな体勢で休んでも問題ありませんが、苦しさや不快を覚える体勢は避けましょう。

■妊娠後期

胎児が大きくなり、子宮が膀胱を圧迫するため、胎動や尿意によって睡眠が浅くなります。

また、肋骨や骨盤の痛みや腰痛を感じることも増えるため、さらに眠りが浅くなりやすい時期です。この時期は、仰向けやうつ伏せ寝を避け、左右どちらかの横向き寝をお勧めします。

妊娠後期は、どの体勢でも苦しさや痛みを感じやすくなります。そのようなときは、クッションや抱き枕を使用すると、お腹の圧迫感をやわらげたり、手足や腰の窮屈感を軽減したりすることができます。リラックスして眠れる工夫を取り入れることが大切です。

左向きや仰向け|体勢別のメリット・デメリット

うつぶせの女性

画像:うつぶせの女性(photo AC)

右向き以外の体勢にはどのような特徴があるのでしょうか。ここでは、左向き・仰向け・うつ伏せについて、それぞれのメリットとデメリットを解説します。妊娠後期に避けたい体勢についても触れますので、自分に合った快適な体勢を見つけてみてください。

左向き

左向きになると、母体の左側が下になり下大静脈の圧迫を防ぐことができます。そのため母体の血流を保ちやすい体勢といわれています。

一方で大動脈が圧迫されやすくなりますが、静脈に比べて弾力があるため、子宮の重みが加わってもつぶれず跳ね返すことができるので心配する必要はありません。

このことからも、理論的には右よりも左の方が望ましいとされています。

ただし、左向きは胃の内容物が逆流しやすい体勢でもあります。子宮が大きくなり胃が圧迫される時期には、ムカムカしたり吐き気を感じたりする可能性があるため、つらいときは他の体勢で休みましょう。

仰向け

仰向け寝は、横向き寝と比べて肩や腕に体重がかからず、リラックスして休める体勢です。しかし、妊娠中に仰向けに寝ると、子宮が下大静脈と大動脈の両方を圧迫し、血流が滞ってしまいます。その結果、血圧低下・吐き気・冷や汗・めまい等の症状が起こることがあり、これを「仰臥位低血圧症候群(ぎょうがい ていけつあつ しょうこうぐん)」といいます。

母体の血液循環が悪くなると、子宮や胎盤への血流が減少し、胎児へ運ばれる酸素や栄養分が充分でなくなる可能性があります。これが仰向け寝は避けた方が良いとされる理由です。

ただし、就寝中に仰向けで目が覚めても焦る必要はありません。血管は複数あり、圧迫されてもその他の血管が血流を補ってくれます。仰向けで目覚めたら、横向きに体勢を変えて休みましょう。

うつ伏せ

うつ伏せ寝は、顔や体に寝具が触れるため安心して眠れる体勢です。うつ伏せでないと眠れない方もいると思います。

しかし、妊娠中期以降は子宮が大きくなり、母体の体重がお腹に直接かかってしまいます。母体自身も圧迫感や苦しさを感じるだけでなく、張りや痛みの原因にもなります。

まだ子宮が骨盤内におさまっている妊娠初期には、お腹の苦しさを感じなければうつ伏せで寝ても構いません。ただし中期以降は徐々に苦しくなり、特に妊娠後期では避けたほうがよい寝方です。

特に妊娠後期に注意する姿勢

妊娠後期は子宮や胎児が大きくなるため、仰向け寝とうつ伏せ寝は避けるようにしましょう。

・仰向け寝:血管が圧迫され、胎児へ酸素・栄養供給が減少する可能性がある。

・うつ伏せ寝:母体の体重が子宮が圧迫され、お腹の張りや痛みにつながる。

ただし、必ずしも横向きで寝なければならないというわけではありません。夜中に目覚めたときに、仰向けやうつぶせだったとしても必要はいりません。大切なのは、長時間同じ姿勢を続けないこと。適度に体勢を変えながら、リラックスできる姿勢を探してみましょう。

寝つきがよくなる体位

妊娠中は寝ているだけでも辛いときがありますよね。そこで、寝つきがよくなる「シムス位」や「セミファーラー位」と呼ばれる体位をご紹介します。

シムス位

シムス位とは、左向き寝の状態から上半身を少しうつ伏せのように倒す体勢です。

・左足は楽な位置に伸ばす

・右足は曲げて前に出す

シムス位

イラスト:シムス位のイメージ(制作:salvia writer)

シムス位のメリット

・子宮や腰回りの筋肉の緊張を和らげ、疲労回復やリラックスしやすい

・お腹を守る安心感がある

・血管を圧迫しないため、仰臥位低血圧症候群を予防できる

・お腹の重さを感じにくい

・胃酸の逆流を防ぐ働きが期待できる

腕や足の位置がつらい場合は、無理に固定せず、自分の楽な位置に調整してください。抱き枕やクッションを活用すると、より快適に寝られるでしょう。

セミファーラー位

セミファーラー位は、仰向けの状態で、上半身を少し(目安:15~30°)起こした体位です。

・大きめのクッションで背中を支える

・膝の下に枕やクッションを入れて膝を軽く曲げてもよい

セミファーラ位

イラスト:セミファーラ位のイメージ(制作:salvia writer)

仰向けは避けるべきと言いましたが、セミファーラー位は上半身を起こすことで子宮の重みが背中ではなく足の方にかかります。そのため、血管の圧迫を避けることができます。

また、膝の下に枕やクッションを入れて膝を曲げることで、骨盤やお腹周りの筋肉の緊張を解くことができ、下腹部のつっぱり感が楽に感じる方もいます。

万が一、セミファーラー位で仰臥位低血圧症候群の症状を感じた場合には、横向き寝に変えて気分が落ち着くのを待ちましょう。

快適な睡眠を目指して

ポジティブなマタニティライフ

画像:ポジティブな妊婦さん(photo AC)

妊娠中は体の変化によって寝づらさを感じやすくなるものです。そんな中で不安を重ねてしまうと、睡眠の質がさがってしまうかもしれません。

「右向きで寝てしまった……」とか、「目覚めたら仰向けだった…」と不安に感じることもありますが、神経質になりすぎる必要はありません。自分が少しでもリラックスできる体勢を工夫することが、ぐっすり眠るための近道になりますよ。


◇執筆:内田よしえ(助産師・看護師・保健師)

内田よしえ のプロフィール】

2人の子どもを育てながら助産師(11年目)をしています。助産師をしながら様々なジャンルの記事を執筆しています。

◇記事の構成・編集:(salvia編集部)

※記事内の画像はイメージです。

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