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水道水で目を洗うリスク!「知らずにやっていると怖いことに……」【薬剤師が解説】

水道水で目を洗うのは避けるべきですが、知らずに「洗眼」をしている人は多いようです。そこで水道水が目にダメージを与える理由や洗眼をしてしまった場合の対処法、また眼のトラブル時に水道水で応急処置をする方法などを薬剤師に解説してもらいました。

目次
水道水で目を洗うのがダメな理由
水道水と涙の成分は異なるから
眼表面のバリアが壊れるから
水道水には塩素が含まれているから
水道水にいるアメーバは「眼」に大丈夫?
水道水で洗眼をしてしまったら
洗いすぎて失明することはある?
洗眼によって眼が痛くなった場合
ゴーグルをつけずにプールで泳いでしまった
水道水で眼を洗ったら充血した
至急「洗眼」が必用な場合(洗い方)
洗剤や薬液関連は応急処置を
水道水で眼を洗う方法
ほこりや花粉は焦らずに対応
水で目を洗うときは精製水にする
ミネラルウォーター=非推奨
浄水器を通した水=非推奨
お湯=非推奨
沸騰後に冷ました水=非推奨
生理食塩水=推奨(市販の商品)
ホウ酸=非推奨
目の洗浄には防腐剤無添加がおすすめ
洗眼薬=推奨(防腐剤無添加)
人工涙液

※この記事は編集部の構成に基づき薬剤師が執筆しました。

水道水で目を洗うのがダメな理由

今は使われていない洗眼器

写真:今では使われなくなった「洗眼器」(photo AC)

ひと昔前は、プールからあがった後に目を洗うのが一般的でした。学校や公共施設のプールにある洗面台には、目を洗う用の「眼洗い蛇口・洗眼器」が設置されていたものです。

そんな過去の常識から、パパやママの中には「水道で目を洗うことは当たり前」と認識している人もいますが、現在、学校のプールにも「眼洗い蛇口・洗眼器」はありません。理由は「水道水で目を洗うことはよくない」という新常識に移行したからです。

2009年には水道水が目に与える負担を考慮し、厚生労働省がプール後の洗眼を推奨しないと発表しています。

それでは、水道水で目を洗うのがダメな理由を整理していきましょう。

水道水と涙の成分は異なるから

涙はただの水ではありません。涙には眼の乾燥を防いだり栄養や酸素を供給したり、眼の表面を洗浄する働きがあるのです。

そんな涙は二層構造で成り、外側から油層、水層です。水層は涙の95%を占めており、成分は、バリア機能を果たす分泌型ムチンや、紫外線から保護するためのビタミン類のほか電解質、酵素などが含まれています。

涙の二層構造とそれぞれの役割

・油層…涙の表面をカバーと蒸発防止

・水層…角膜や結膜への栄養補給、感染予防、傷の治りを早くするなど

このように涙に含まれた水以外の成分は、水道水で目を洗うことで流されてしまうというわけです。

眼表面のバリアが壊れるから

眼の表面(角膜)は涙で覆われていて、膜型ムチンというタンパク質成分が存在しています。膜型ムチンには角膜と涙液層を定着させ潤いをキープする働きがあり、このおかげで眼の表面に涙が行き渡り、まばたきの摩擦も軽減できるのです。

しかし水道水で目を洗うことで膜型ムチンも剥がれてしまい、涙が眼にはりつきにくくなります。膜型ムチンが少なくなると角膜は涙を弾くようになるため、乾燥してしまいます。その結果ドライアイの状態に陥ったり、症状が悪化したりすることになるのです。

水道水には塩素が含まれているから

水道水には細菌を殺菌するために、一定量の塩素が含まれています。この塩素が眼に悪影響を及ぼすと懸念されているのです。

よって、水道水で目を洗うと塩素によって角膜や結膜に小さな傷が付く恐れがあります。たとえ小さな傷でも、細菌が感染して炎症が起こり、視力低下につながる可能性もあるのです。そのため水道水での洗眼には注意が必要です。

※眼の表面は角膜や結膜で覆われています。角膜は黒目の最前面にあり、光を屈折する役割があります。結膜は白目の部分を覆っており、細菌やウイルスなどから目を保護しています。

水道水にいるアメーバは「眼」に大丈夫?

充血した目

水道水には、アカントアメーバが含まれていることがあります。アカントアメーバとは、土壌・河川・沼など日常環境に生息する20〜30ミクロン程度の微生物です。塩素ではアカントアメーバを死滅させることができないことから、水道水での「眼洗い」を敬遠する人もいます。

角膜がアカントアメーバに感染すると「アカントアメーバ角膜炎」を引き起こしますが、水道水で洗眼するだけで感染する可能性は低いでしょう。ただしコンタクトレンズを使用している場合は要注意です。

水道水でコンタクトレンズを洗うとそこにアメーバが付着しますし、専用の保存液ではなく水道水で保存するとアメーバが繁殖するからです。

アカントアメーバ角膜炎の症状は、目に強い痛みや赤みなどの炎症が出ます。また過剰に涙が出ることもあります。さらに光に対して痛みを感じたり、角膜が白濁することで視力が低下したりすることもあるのです。悪化すると失明する場合もあるため、感染リスクが低いとはいえ注意しましょう。

アカントアメーバ角膜炎にならないためにも、コンタクトレンズは専用の洗浄液や保存液を用いて、適切な使用方法で使用しましょう。

水道水で洗眼をしてしまったら

水道水で目を洗うイメージ

ここまで水道水で目を洗うことの危険性について解説してきました。本章では、気になる質問について回答します。

洗いすぎて失明することはある?

水道水での洗眼が直接の原因で失明することはないでしょう。しかし水道水で目を洗うことで炎症が起こったり、細菌やウイルスに感染したりすることはあります。悪化のしかたによって視力の低下につながる可能性があることを覚えておきましょう。

洗眼によって眼が痛くなった場合

水道水で目を洗うと、水道水に含まれる塩素によって角膜が傷ついて痛みを感じることがあります。眼への負担が懸念されますので、すぐに水道水での洗眼を中止し、洗眼薬や生理食塩水、人工涙液で目を洗うようにしましょう。

ゴーグルをつけずにプールで泳いでしまった

プールの水には細菌やウイルスの繁殖を防いだり、水の衛生状況を保ったりするために塩素が含まれています。プールで長時間ゴーグルを付けずに目を開けて泳いでいると、眼の角膜が傷ついてしまい、乾燥や痛み、充血などの症状が現れる恐れがあります。

水道水で眼を洗ったら充血した

水道水で目を洗うと眼を保護する成分まで洗い流してしまいます。その結果、ドライアイになり、充血を引き起こすことがあります。

時間がたてばたいていの充血は治まりますが、早く治したい場合には、人工涙液など涙に近い成分を使用した点眼薬が効果的ですよ。

至急「洗眼」が必用な場合(洗い方)

眼の洗い方

水道水で目を洗うのは、基本的にはおすすめできません。しかし、緊急で洗眼が必要な場合には、水道水を使用することもあります。

【緊急時の判断】

・目にごみやほこりなどの異物が入った→できる限り洗眼液で洗う

・洗剤などの化学薬品が入った→急を要する場合は水道水で洗い流す

※製品の注意表示に洗い流す時間の記載があれば、表示に従って洗ってください。特に記載がない場合は、15分以上洗い流すようにしましょう。

洗剤や薬液関連は応急処置を

特にアルカリ成分のものが目にはいったときには要注意です。治療後にも目に障害を与えたり重症化したりする可能性があるため、応急処置で水道水を使うこともあります。

身近なものでいうと、セメントやモルタル、カビ取り剤、パーマ液、毛染め液、洗剤などがアルカリ成分を含みます。

水道水で眼を洗う方法

緊急時に水道水で目を洗う場合には、流水を両手ですくってその中に目を浸けるように入れ、水中でよくまばたきをします。

シャワーで洗い流す場合には、水が下から噴射する角度で使用。水圧を弱めにして指でまぶたを開き、シャワーを目に当ててください。

眼を洗浄した後も眼球および目のまわりに痛みや違和感がある場合は、必ず眼科医の診察を受けましょう。また、製品の注意表示に『眼科医の診察を受けること』と記載されている商品もあります。その場合も、痛みや異常など自覚症状がなくても必ず眼科を受診してください。

ほこりや花粉は焦らずに対応

ほこりや花粉などを洗い流したい場合は、水道水ではなく人工涙液など涙の成分に近いもので洗いましょう。

特に花粉症は多くの人を悩ませている現代病なので、かゆさのあまり水道水で眼洗したくなるかもしれません。しかし花粉症の場合に水道水で目を洗うのは、塩素の刺激で目を傷つけてしまうリスクがあるため推奨できません。

水で目を洗うときは精製水にする

精製水のイメージ

水で目を洗う場合は精製水の使用が推奨されています。

精製水とは、蒸留やろ過などの方法で不純物やミネラルを取り除いた、純度の高い水のことです。安全性が高いため、医療や化粧品、塗料の希釈などさまざまな分野で使用されています。コンタクトレンズの洗浄剤や保存液に用いられているのも精製水。ドラッグストアやホームセンターで購入できます。

精製水には塩素など目に悪影響を与える成分は含まれていないため、目の洗浄に使用可能です。ただし細菌が繁殖しやすい環境であるため、開封後すぐに使用しましょう。

なお精製水のほかに、ミネラルウォーターや浄水した水、生理食塩水など、目を洗うときに使ってもよいか迷う方もいるでしょう。それぞれ洗眼できるかどうか解説しますので、参考にしてください。

ミネラルウォーター=非推奨

ミネラルウォーターには塩素は含まれていませんが、ミネラルや微細なバクテリアが残っている可能性があります。バクテリアによって細菌やウイルスが繁殖し、目に悪影響を与える恐れがあるため、ミネラルウォーターでの洗眼はおすすめできません。

浄水器を通した水=非推奨

浄水器は塩素などの化学物質やカビ、バクテリアなどの微生物を取り除きます。しかし、80%以上の除去率があれば浄水器として認められるため、浄水器を通しても塩素などがわずかに残っている可能性があるのです。浄水後の水でも、洗眼に使うのは避ける方が賢明といえましょう。

お湯=非推奨

水道水から出るお湯にも、水と同じく塩素が含まれている可能性があります。また水道管を通って蛇口から出るまでの間に汚染されることがあるため、完全に清潔であるとは言えません。よって、お湯で目を洗うことは控えましょう。

沸騰後に冷ました水=非推奨

「沸騰させてから冷ました水なら目を洗ってもよいのでは?」と考える方もいます。確かに水道水を沸騰させることで、塩素を取り除くことができます。

しかし一方で、煮沸しても残ってしまう物質もあります。煮沸しても残る可能性があるのは、水道管にも使われている鉄、銅、亜鉛などの金属類です。これらの物質は目に負担をかけてしまう可能性があるため、煮沸後に冷ました水でも洗眼はしないほうがよいでしょう。

生理食塩水=推奨(市販の商品)

化学物質などの異物が目に入ってしまったときの応急処置として、生理食塩水での洗眼が有効です。生理食塩水は、濃度が0.9%の塩水で、煮沸して冷ました水1Lに塩9gを溶かすことで作れます。水道水で作成すると塩素が除去しきれない可能性があるため、市販の生理食塩水を購入することをおすすめします。

ホウ酸=非推奨

昔はホウ酸水で目の洗浄をするのが一般的でした。理由は抗生物質の目薬がなかったからで、この治療法しか方法がなかったからです。しかし、現代には抗生物質の目薬が多種あり、さらにホウ酸は角膜を傷つける可能性があるため、目の洗浄には使用しないほうがよいと考えられています。

なお、目薬の中には防腐剤としてホウ酸が使用されているものもあり、その場合は安全に使える濃度に調整されているようです。

目の洗浄には防腐剤無添加がおすすめ

コンタクトの洗浄

目を洗うのに水道水は不適切であることがわかりましたね。そして目を洗うときには、洗眼を使用目的とした商品を使うのがベストですが、その中でもおすすめの商品をピックアップしました。

洗眼薬=推奨(防腐剤無添加)

洗眼薬を使用する場合は、防腐剤が無添加の商品を選びましょう。よく使われている防腐剤は、ベンザルコニウム塩化物、パラペンなどです。これらの防腐剤は、角膜に傷が付いたり、角膜の一部の細胞が剝がれたりする角膜上皮障害という症状を引き起こす可能性があります。

防腐剤無添加の洗眼薬の具体例は、ロートフラッシュ(ロート製薬)、アイボン(小林製薬)、ウェルウォッシュアイ(参天製薬)などが挙げられます。洗いすぎると目の表面の成分も流れてしまうため、1日あたりの使用回数を守ってくださいね。

人工涙液

人工涙液の点眼薬は洗眼におすすめです。人工涙液とは、涙と同じ濃度の塩分を含む点眼薬です。防腐剤は眼の角膜を傷つける可能性があるため、防腐剤無添加のものを選択してください。

なお防腐剤無添加の商品例は、ソフトサンティア(参天製薬)、ロートソフトワン点眼液(ロート製薬)など。薬局やドラッグストアで手軽に購入できますよ。

目を洗う行為について、昔と現代では常識が随分変わっています。

たとえば、令和の時代に「おばあちゃん」と呼ばれる人の話ですが、昔はホウ酸で洗眼をすることが当たり前だったので、孫にその方法を伝授したそうです。しかし、症状は回復するどころか悪化。眼科医にホウ酸で目を洗うことを止められたという話もあります。

また自分が子どもの頃に「眼洗い蛇口・洗眼器」を使っていた世代は、わが子に水道水で目を洗うリスクを伝えられていない可能性もありますよね。

医学も科学も日々躍進を遂げている時代です。今後も情報がアップデートされることもあるかもしれませんので、「自己判断」や「思い込み」をしないよう、アンテナを張っておくとよさそうですね。


◇執筆:渡辺ユリ/薬剤師(クリニック門前薬局・面薬局勤務、OTC販売)

◇記事の構成・編集/(salvia編集部)

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