※この記事は、管理栄養士・野菜ソムリエ・中級食品診断士など有資格者に質問し、その情報を参考に執筆しました。
1.おにぎりの冷蔵庫保存が「まずい」理由を知る

おにぎりを冷蔵庫で保存するために、まず、味が落ちる原因を探っていきましょう。
おにぎりを冷蔵庫で保存すると、パサパサと硬くなります。このようにお米が硬くなってしまう理由は、お米の主成分である「デンプン」の性質によるものです。
デンプンは、温度により「糊化(α化)」や「老化(β化)」が起こるもので、これがお米の味を大きく左右します。
【デンプンの糊化とは】
デンプンにねばりが出てやわらかくなること。炊飯中に熱と水が加わることで起こる現象が「糊化(α化)」です。デンプンが糊化することで、お米はもっちりとしてほんのり甘くなります。
【デンプンの老化とは】
炊いたお米の水分が抜けて、デンプン同士がくっつくことです。お米が冷めることでデンプンは「老化(β化)」。生米の状態に近づき、味がまずくなったと感じます。
冷蔵庫でおにぎりを保管するための知識として、デンプンが老化する温度を確認しておきましょう。
【デンプンの老化が起こりやすい2つの特徴】
・デンプンが老化しやすい→0~5℃で最も老化が活発化
・デンプンが老化しにくい→60℃以上、-20℃以下で起こりにくい
冷蔵庫(冷蔵室)の温度は2℃~5℃なので、冷蔵庫はでんぷんの老化が最も進む環境。冷蔵庫に入れたおにぎりは、パサパサで硬いごはんになりやすいということです。
実験!冷蔵庫で保存した翌日のおにぎり
試しに、実際に手作りしたおにぎりを冷蔵庫で保存して、翌日に食べてみました。
にぎりたてのおにぎりは、お米のつぶがふっくらしているのに対して……

撮影:亀崎智子
冷蔵庫で保存した翌日のおにぎりは、お米の粒が縮こまっているのがひと目でわかります。

撮影:亀崎智子
【見た目の変化】
・水分が抜けて、硬い感じ
・お米の粒がつぶれて縮小しているように見える
【味の変化】
・パサパサ、ポロポロして食べにくい
・ぼそぼそして「おいしい」とは言えない
手作りのおにぎりを冷蔵庫でひと晩おいて翌日に確認してみましたが、結果は見た目も味もよくありませんでした。
✔CHECK
冷蔵保存をしたおにぎりがまずいのは
科学的根拠があるようです!
2.手作りおにぎりの賞味期限と消費期限を知る

おにぎりを冷蔵保存すると味が落ちるので、できるだけ冷蔵庫を使いたくないものです。そのために、おにぎりの賞味期限と消費期限について把握。食中毒の危険性や日持ちについても確認しておきましょう。
*備考*
賞味期限とは:未開封で適切な保存をした場合、おいしく食べられる期限
消費期限とは:未開封で適切な保存をした場合、安全に食べられる期限
手作りのおにぎりは傷みやすいため、「賞味期限」ではなく「消費期限」が適用されます。
そんな手作りおにぎりの消費期限は、 約12時間(半日)~1日ていど といわれています。
ただしこの日持ちの目安は、徹底した衛生管理のもとではじめて成り立つ消費期限です。手洗いをしっかりしたうえで、調理場や調理器具など清潔は必須条件。不衛生な環境で作ったおにぎりは、消費期限が短くなるので注意してください。
消費期限を過ぎたおにぎりの危険性
おにぎりの食中毒の原因で多いのは、黄色ブドウ球菌です。本来は手指や皮膚、髪などにある常在菌で、菌を食べること自体が食中毒につながるわけではありません。
しかし食品の中で繁殖した黄色ブドウ球菌は「エンテロトキシン」という毒素を産生します。そして黄色ブドウ球菌の数が105個/g以上になると、「エンテロトキシン」は発症毒素量に達するとされています。
感染した場合は、30分~6時間で嘔吐や下痢といった症状が出ます。(※参考:農林水産省)
<黄色ブドウ球菌が増殖する条件>
・20℃~50℃で増殖
・35℃~40℃(人肌)の温度は特に増えやすい
<エンテロトキシンが産生される条件>
・10℃~46℃
黄色ブドウ球菌の増殖は環境に左右されるため、たった2時間で食中毒を引き起こすこともあります 。悪い条件がそろってしまうと、半日も日持ちしないことを覚えておきましょう。
また一度生成された黄色ブドウ球菌は、100℃の温度で30分加熱しても分解されず、酸にも強いため消化管内でもほぼ分解されません。消費期限が過ぎたおにぎりは危険であることがわかりますね。
これら消費期限に関連する情報をふまえて、「よくある疑問」について判断していきましょう。
前日から「常温」で置いたおにぎりは食べられる?
・夏(参考温度/25℃)は、2時間でも細菌の腐敗リスクが高まるため危険。
・春と秋(参考温度/10℃~25℃)なら8時間~12時間は日持ちするので約半日を目安に消費。
・冬(参考温度/~10℃)なら、12時間から24時間大丈夫とされている。
冬場だからといって、暖房の効いた部屋に長時間放置するのはNG。季節にかかわらず、気温や室温を気にかけ、あくまでも「温度」を基準に判断しましょう。
このように「常温保存」といっても、季節や気温など環境によって、消費期限が異なります。たとえ同じ条件でも直射日光を避けるのがベター。太陽のあたらない風通しのよい場所で保存することを心がけましょう。
朝ごはん用のおにぎりを夜に作るのはNG?
夏場(冷房なしの部屋)であればNGですし、春と秋はグレーゾーン。冬場(暖房なしの部屋)であれば、保存条件は満たされると考えられます。
しかし常温で6時間~8時間ほど置いたおにぎりに、安全を断言することはできません。冬とはいえ、リスクがあることだけは承知しておきましょう。
夜に作ったおにぎり(常温保存)は翌日の昼までに処分
前日の夜に作った常温保存のおにぎりは、昼までに処分しましょう。たとえば就寝前におにぎりを作り、昼ご飯までは、14時間ほど経過する計算。季節によってはかなりリスクの高い状態です。
冷蔵庫で保存したおにぎりの日持ち
味よりも安全性を優先して、おにぎりを冷蔵庫で保存した場合は、何日もつのでしょうか?
冷蔵庫の庫内温度は2〜5℃が目安なので、細菌の繁殖対策のみで考えると、1日(24時間)保存することが可能です。しかし水分が抜けて硬くなることは覚悟しておきましょう。
✔CHECK
消費期限は保存の温度しだい!
冷蔵庫は日持ちはしても難あり
3.手作りおにぎりを作るときのポイント

食品ロスや家計の事情(節約)を考えると、おにぎり1個でも無駄にしたくないものです。少しでもおにぎりを日持ちさせるために、作り方のコツや、保存方法のポイントをチェックしてみました。
○日持ちをさせるための工夫
素手で作らない(にぎらない)
まずは、おにぎりを傷みにくい状態で握ることが大切です。人間の手には無数の細菌がついており、先述した黄色ブドウ球菌もそのひとつ。素手で握ることでその細菌がごはんにつき、腐敗の進行を早めてしまいます。ラップやおにぎりの型、ビニール手袋などを使用し、素手で握らない工夫をするとよいでしょう。
酢を入れて炊飯する
ごはんを炊く時に、酢を少量加えます。酸性の強い酢には、防腐・抗菌作用が期待できるため、保存性を高めることが期待できます。ただし寿司酢といった、調味料が加わっている調味酢は避けてください。
酢を入れる場合は、2合のお米に対し、酢大さじ1が目安。加熱することで、酸味が気にならなくなるため、お米の味に影響はありません。また、酸味が好きな方は、炊飯後に酢を追加するのもよいでしょう。もしくは抗菌シートを使用して細菌の繁殖を抑える方法もありますよ。
塩を入れて炊飯する
塩には、酢のような殺菌作用はありません。しかし塩を入れて炊いたお米は、凝固作用の働きによって、お米がしまります。ひと粒ひと粒がしっかりとしつつも水分はきちんと含まれているので、成形しやすく口の中でほどけやすい状態。保存するおにぎりにも、好条件です。
塩の量は、お米2合に対して小さじ1が目安。ただし、お米を浸水させるときは普通の水とつかうこと。最初から塩を入れてしまうと、炊きあがりったお米が硬くなってしまうので注意しましょう。なお、手で塩をつける細菌付着のリスクも軽減できますよ。
のりは食べる前に巻く
のりは、食べる前に巻くのがおすすめです。おにぎりが温かいうちに、のりを巻いてしまうと、おにぎりの中身が蒸された状態になり、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。
持ち運びをする場合も、少し手間でもおにぎりとのりは分けておき、食べる直前に海苔を巻くことを習慣づけましょう。
腐りにくい具材を選ぶ
おにぎりの中に傷みやすい具材を入れてしまうと、細菌が繁殖しやすい環境になってしまいます。食べるまでの時間が短ければよいですが、保存の時間がかかる場合は要注意。腐りにくい具材を選ぶことで、日持ちさせることができます。
※具材選びの詳細は次章参照。
○保存方法や持ち運びのポイント
空気に触れないようにする
おにぎりは乾燥するとまずくなるので、冷蔵庫で保存するなら、密閉することが大事です。ラップで包み、さらにジップロックやタッパー、おにぎり専用の保存容器などにいれましょう。水分が抜けるのを抑えられますし、冷蔵庫内のにおいが移る予防にもなりますよ。
ただし、持ち運ぶ場合はラップよりもアルミホイルがおすすめ。ラップは通気性が悪く、水蒸気がたまりやすいので、雑菌が増えやすいからです。
冷蔵庫内で保存する場所は「野菜室」か「ドアポケット」
おにぎりが最も硬くなりやすい温度は、0~5℃です。通常の冷蔵庫の庫内温度は、2~5℃なので、冷蔵庫に入れると味は確実に落ちます。
そこで、着目すべきが野菜室やドアポケット。野菜室は、冷蔵室より庫内温度が3〜8℃と少し高めで、「ドアポケット」に関しては6℃~9℃とさらに高いからです。
おにぎりの持ち運び方
おにぎりを自宅から外に持ち運ぶときは、夏場であれば保冷剤は必須。10℃以下になるように設定しましょう。
冬場でも保温しているとリスクは高まるので、可能であれば保冷したものをあたためなおすのがベスト。また保温する場合は、65℃以上で持ち運ぶのがリスク軽減の目安です。
✔CHECK
「常温=細菌が繁殖しやすい」
「冷蔵庫=まずくなる」
この間を抜けられるような工夫を!
4.おにぎりの具材の特徴・材料選びのヒント

おにぎりは、言わば日本のファーストフードです。シンプルなおにぎりはもちろん、さまざまな具材との組み合わせを楽しむことができますよね。
しかし、おにぎりの保存性は、具材の種類に大きく影響されてしまいます。手作りのおにぎりは、すぐに食べる場合をのぞき、具材選びには気をつけましょう。
<傷みにくい具材のヒント>
・塩分濃度が高いもの
・加熱されたもの
・水分量が少ないもの
・酸味がきいているもの
<傷みにくい具材の具体例>
塩、梅干し、昆布、おかか、焼き鮭、高菜、塩昆布など
これらの具材は、細菌が繁殖しにくとされているものです。冷蔵庫や冷凍庫でストックする場合もふくめ、おにぎりを日持ちさせたい時に参考にしてください。
また一方、傷みやすい材料もあります。保存時間が長い場合や夏場などは、傷みやすい具材を避けるとよいでしょう。
<傷みやすい具材のポイント>
・生のもの
・水分量が多いもの
・油の使用量が多いもの
<傷みやすい具材の具体例>
ツナマヨなどの〇〇マヨ、明太子(生タラコなども)、ネギトロ、いくら、天むす、炊き込みごはんなど
そもそも傷みやすい具材は、温かいおにぎりと一緒になると、細菌が繁殖しやすくなることを覚えておきましょう。またこれらの食材は、冷蔵や冷凍保存した場合も、味が落ちやすい傾向です。
✔CHECK
日持ちをさせるためには
傷みにくい具材選びも重要!
5.おにぎりを復活させる方法3選

撮影:亀崎智子
冷蔵庫から出したおにぎりは硬い状態ですが、これは温度によって変化したデンプンが原因。理論的には温め直すことで、やわらかくもどすことが可能というわけです。老化(β化)したデンプンを、糊化(α化)させるイメージですね。
ここでは、硬くなったおにぎりを復活させる方法として、代表的な3つの温め方を紹介します。
1.電子レンジで温める
おすすめの温め方は電子レンジで【600w30秒】。これは、複数の人が試した結果やコンビニおにぎりの温め方から割り出した数字です。
方法は、おにぎりをお皿にのせてラップをふわりとかぶせ、電子レンジをスタートさせるだけ。おにぎりの状態に応じて、少量の水を振ったり、温度と時間を設定したりしてください。
冷蔵庫で保存していた時間の長さや具材によって、仕上がりに差が出ます。満足感についても個人差があるので、物足りない場合は10秒ずつ延長して様子を見ましょう。
なお、コンビニで買ったおにぎりを復活させたいの場合は、少し封をあけてから温めること。電子レンジで温める場合は、包装の破裂を抑えるために少し封をあけ【500~600Wで20秒~30秒】を目安に加熱しましょう。
2.蒸して復活させる
冷蔵庫で保管したおにぎりは、蒸すことでも復活させられます。せいろや蒸し台、鍋、フライパンなど、使いやすい道具でOK。特に電気式の蒸し器がある場合は便利ですね。
どの道具を使うにしても、蒸すときはしっかりと沸騰させたお湯(温度)で蒸すことがポイントです。
3.湯煎袋を使用する
おにぎりを湯煎袋に入れて、空気を抜いて軽く縛ります。沸騰した湯の中に入れて数分待つと、熱々のおいしいおにぎりが楽しめます。温まるまでの時間は、火の加減や、具材、冷蔵していた時間によりそれぞれ。確認しながら、お好みの温かさになるまで、待ちましょう。
✔CHECK
おにぎりの復活の呪文は「温」!
捨てる前にあたためてみよう!
コンビニおにぎりは冷蔵保存?常温保存?

手作りしたものよりコンビニのおにぎりの方が、日持ちしやすいイメージがあります。まずはコンビニのおにぎりの保存方法や賞味期限について、確認していきましょう。
コンビニおにぎりの消費期限
コンビニのおにぎりは賞味期限ではなく消費期限で掲示されています。一般的には「製造から2日以内」ほどで記載されているようですが、この日数はややゆとりを残して設けられているとのこと。
消費期限を過ぎたおにぎりが、すぐ腐るというわけではありませんが、食べない方が懸命です。
コンビニのおにぎりは腐りにくい?
コンビニのおにぎりは手作りよりも腐りにくいイメージがあります。しかし、それは徹底した製造工程や保存の温度設定など商品管理によるものです。ただし多くの商品には、pH調整剤、調味料(アミノ酸)、増粘多糖類、グリシリンなどの添加物が入っています。これらによって、手作りのおにぎりよりは腐りにくくなっていると考えられます。
なお商品によっては「保存料不使用」とされ、商品の裏側に記載のない場合でも「キャリーオーバー」によって、記載がない場合もあります。
※キャリーオーバー:原材料に用いられた添加物について、原材料に添加物が含まれていても、該当商品にまで持ち越さず効果をおよぼさない場合は、ラベルの表示を免除される。(参考:厚生労働省|添加物の表示について)
コンビニのおにぎりの保存方法
コンビニのおにぎりは、扉のある冷蔵庫に入っておらず、陳列されているケースは約15℃。デンプンの老化する温度(0~5℃)を考えると、お米が硬くならずに済む保存温度です。そして、自宅の冷蔵庫(2℃~5℃)では冷えすぎであることがわかりますね。
手作りのおにぎりより、コンビニ商品の方が腐敗の進みはゆっくりです。しかし、コンビニのおにぎりも腐ります。安全性を考えるなら確かに冷蔵庫保存は有力かもしれませんが、間違いなく味は落ちるの現実。結論として、コンビニおにぎりは冷蔵庫には入れず、なるべく早めに消費しましょう。
コンビニで買ったおにぎりでも、正しい方法で保存するのは鉄則。直射日光や高温多湿を避け、消費期限を必ず守るようにしましょう。また保存時の温度や環境によって腐敗は進行するので、消費期限だけ見て安心せず、味や臭いなどしっかりと確かめることが大切です。
✔CHECK
コンビニのおにぎりは冷蔵庫に入れない!
腐らない配慮をして「常温保存」する
長期保存するなら冷蔵庫より冷凍庫

おにぎりは、冷蔵庫に入れるのではなく常温保存がセオリーです。しかし、どうしても日持ちさせたいときは、冷蔵よりも冷凍。正しい方法で作れば、2週間~1カ月はもちますし、冷蔵保存するよりも旨味や香りを残すことができるからです。
作り方のコツは先述したものにくわえ、お米が熱いうちににぎるのがポイント。水分がたっぷりふくまれているうちににぎります。ただし熱い状態でにぎっても、必ず冷まして粗熱をとってから冷凍庫に入れ「急速冷凍」を心がけましょう。
なお、 冷凍したおにぎりは、自然解凍はNGです。電子レンジを使い、600Wで1分30秒〜2分くらいを目安にあたためて召し上がってくださいね。
✔CHECK
基本は「常温保存」
賢く保存するなら「冷蔵より冷凍」
◇記事の構成・執筆・編集/香瑚-KAKO-(salvia編集部)
◇情報提供・一部撮影/亀崎智子(管理栄養士・野菜ソムリエ・中級食品診断士)