※この記事は編集部の構成のもと、薬剤師が執筆しました。
市販薬のイメージ

画像:ドラッグストアで薬を選ぶ女性(photo-AC)
市販薬に対して「強くなさそう」「なんとなく安心」というイメージを持っている方は、実際に多いです。
その背景には、手軽に購入できるという特徴があげられます。
市販薬(OTC医薬品)は医師の処方がなくてもドラッグストアや薬局など身近な場所で購入できる一方、処方薬は医師が診察を行い、症状・年齢・体質・持病などを確認したうえで処方されます。
この違いから、処方薬は「特別で強い薬」、自由に買える市販薬は「軽い症状向けの弱い薬」と、無意識に区別されがちです。
さらに、このイメージを強めているのがテレビCMや広告です。
市販薬のCMでよく見られる表現をピックアップすると
・「やさしく効く」
・「眠くなりにくい」
・「家族みんなで使える」
このような表現が多く使われています。
パッケージも、親しみやすいデザインも多く提案されており、医療機関の薬袋とはまったく違う印象です。
その結果、「体に負担が少なそう」「副作用の心配がほとんどなさそう」といった誤解が生まれやすくなっています。
「市販薬=弱い」とは限らない

画像:錠剤とコップに入った水(photo-AC)
「市販薬は処方薬より成分量が少なく、効き目も弱いから安全」という消費者の声を聞いたことがあります。
しかし実際には、市販薬が弱いとは限りません。
有効成分・量が処方薬と同じであることも
まず知っておきたいのは、市販薬だからといって、有効成分の量が極端に少ないわけではないという点です。
市販薬の中には、病院で処方される薬と同じ有効成分が使われているものも数多く存在します。
たとえば、解熱鎮痛薬、胃薬、アレルギー薬、風邪薬などは、処方薬と共通の成分が含まれているケースも珍しくありません。
処方薬との違いは、主に次の点です。
1回量や1日の最大量
配合されている成分の組み合わせ
対象年齢や使用条件
最近では、処方薬とほぼ同じ配合・用量の市販薬も販売されています。
つまり市販薬は「弱い薬」ではなく、「自分で管理して使う薬」なのです。
使い方(服用量や併用薬)で副作用リスクが高まる
手軽に購入できる市販薬も、体に作用する「薬」です。
用法・用量を守っていれば大きな問題が起きにくくても、誤った使い方をすると副作用リスクは高まります。
たとえば次のようなケースです。
痛みが強いという理由で自己判断で量を増やす
複数の市販薬を同時に使う
本来定められている服用の期間を越えて長期間使い続ける
このように誤った使い方をすると、体への負担は大きくなります。
特に注意したいのが、肝臓や腎臓への影響です。
解熱鎮痛薬や風邪薬に多く含まれる成分は、肝臓で分解されます。
薬の量が増えたり、成分が重なったりすると、肝臓に強い負担がかかることがあります。
また、一部の鎮痛薬は、腎機能の低下を悪化させる可能性があります。脱水時や腎機能が弱っている場合は、リスクが高まる危険性があるので注意が必要です。
薬物アレルギーの可能性
体に合わない成分を摂取すると、アレルギー症状が起こることがあります。
発疹や痒みだけでなく、重度(アナフィラキシーショック)の場合には、呼吸困難や血圧低下、意識障害など命に関わる症状が現れることも把握しておきましょう。
つまり、市販薬は「誰でも買える」というメリットが、逆にデメリットになることもあるのです。誰でも使えるように見えますが、年齢・体重・持病・妊娠や授乳の有無・併用薬は自己管理です。そのため、体質や状況によっては、処方薬以上に注意が必要になることを覚えておきましょう。
市販薬だから安全と思い込まず、中身はれっきとした“薬”であるという意識を持つことが大切です。
薬剤師が実際によく受ける「市販薬トラブル例」

画像:棚から薬を取る薬剤師(photo-AC)
市販薬は手軽に購入できる反面、使い方を誤ってしまうケースも少なくありません。
ここでは、薬局で薬剤師が実際によく受ける相談例を紹介します。
例1:鎮痛薬を自己判断で増量 → 肝臓への負担
「規定の量では効かない気がして、少し多めに飲んだ」という声をよく聞きます。
また、以前鎮痛剤で痛みが改善したという経験から、「痛みが引かないので回数を追加した」というケースもあります。
―頭痛や生理痛のつらさから、自己判断で薬の量を増やしてしまう方は珍しくありません。
特に注意が必要なのが、「アセトアミノフェン」を含む市販薬です。
アセトアミノフェンは、正しい量で使えば比較的安全性の高い成分ですが、過量摂取すると肝臓に負担がかかると知られています。
副作用のリスクを減らすためにも、記載された用法・用量を必ず守って服用しましょう。
例2:風邪薬+頭痛薬の併用 → 成分重複による過剰摂取
「風邪薬を飲んでいるけど、頭痛がひどくて別の薬も飲んだ」
「生理痛の薬を飲んでいたが、咳が出るため風邪薬を飲んだ」
という相談も受けます。複数の症状があるため、薬も複数服用するケースです。
症状が違うため問題ないように思えますが、、実は風邪薬と頭痛薬の両方に、同じ解熱鎮痛成分(アセトアミノフェンなど)が含まれていることが多いのです。
これは、同じ成分を重ねて服用することになります。その結果、気づかないうちに1日の最大量を超えてしまうことがあります。
市販薬は「効能が違えば併用できる」と思われがちですが、重要なのは効能ではなく成分です。一般の方にとって成分の重複は見えにくく、しかも大きなリスクになりうるもの。市販薬の購入時や服用前は、成分名を確認する習慣をつけましょう。
例3:処方薬+市販薬の併用 → 思わぬ重複と過剰摂取
「皮膚科で定期的に飲んでいる薬があるのに、市販の鼻炎薬も飲んでしまった」
「肩が痛くて整形外科で鎮痛剤をもらっているが、風邪をひいたので風邪薬を飲んだ」
このように、気付かないうちに成分が重複しているケースは非常に多いです。
特に花粉症の時期には、市販薬を使用する方が多く、薬の併用の相談が増える傾向にあります。
処方薬と市販薬の併用にも注意が必要で、特に多いのが抗アレルギー薬の重複です。
たとえば、皮膚科でかゆみ止めを処方されている場合、風邪薬や鼻炎薬にも同じ抗アレルギー成分が含まれていることがあります。
かゆみ止めに使われる抗アレルギー剤は、鼻水やくしゃみを抑える効果もあるため、成分が重複する可能性があるのです。抗アレルギー成分は、花粉症の鼻炎薬にも同様の成分が含まれていることが多いので、注意しましょう。
また、鎮痛剤と市販の風邪薬には、同じ解熱鎮痛剤(アセトアミノフェン、ロキソプロフェンNaなど)が含まれていることがあります。整形外科を受診している場合は要注意です。
医療機関の薬を服用中に市販薬を買う際は、お薬手帳を携帯し、購入前に薬剤師へ確認することでリスクを減らせます。
例4:妊娠中・授乳中の服用 → 赤ちゃんへの影響の可能性
妊娠中や授乳中の市販薬相談も日常的に受ける相談です。
「家にあった鎮痛剤を飲んだ」
「処方薬だから大丈夫だと思った」
「妊娠中にこの薬を飲んでしまった……」と、中には服用後に不安になって相談される方もいます。
市販薬の中には、胎児に影響する可能性のある成分や、母乳へ移行する可能性のある成分が含まれているものもあります。
「病院の薬は怖いけど、市販薬なら弱くて安心」という思い込みは、リスクを高めてしまうこともあるのです。
妊娠中や授乳中に使用できる成分は限られています。
症状が軽くても自己判断せず、必ず医師または薬剤師に相談しましょう。
「安全に使えている人」と「注意が必要な人」の違い

画像:薬を飲む女性(photo-AC)
市販薬でトラブルが起きるかどうかは、薬の種類だけでなく、使う人の行動や考え方も大きく影響します。
薬局での相談経験から、以下のような共通点が見えてきます。
安全に使えている人の共通点
市販薬を上手に使えている人は、次のようなポイントを自然に守っています。
用法・用量を必ず守る
添付文書や包装に記載されている用法・用量を確認し、指示通りに服用します。効果が弱いと感じた場合も、自己判断で増量はしません。
他の薬との併用を確認している
すでに飲んでいる薬やサプリメントがある場合、「一緒に飲んで大丈夫か」を薬剤師に確認や相談をしてします。
妊娠中・授乳中は必ず相談している
「市販薬だから大丈夫」と決めつけず、妊娠中・授乳中であることを伝えたうえで、専門家に相談しています。
注意が必要な人に多い行動
一方で、トラブルにつながりやすい人には、次のような傾向があります。
効かないからと自己判断で量を増やす
効果が弱いと感じると、用量を超えて服用してしまうケースがあります。添付文書の注意書きは軽視されがちです。
複数の市販薬を同時に使う
症状ごとに別の薬を使い、結果的に同じ成分を重ねて摂取してしまうことがあります。「それぞれ別の薬だから大丈夫」と思い込むケースです。
持病や妊娠の有無を考えずに服用する
高血圧、腎臓病、肝臓病、喘息などの持病がある場合でも、「市販薬だから関係ない」と考えてしまうことがあります。持病や体質によっては、市販薬の選択に注意が必要です。
市販薬を使う前のポイント

画像:ドラッグストアの薬棚イメージ(photo-AC)
市販薬は決して弱くて安全というわけではなく、副作用やアレルギーが起こる可能性もあります。しかし、服用前に少し確認するだけで、思わぬトラブルを避けることができます。
ここでは、市販薬を使う前に確認しておきたいポイントを紹介します。
成分名:同じ成分が重なっていないか
複数の薬を使用する際に確認してほしいのが、有効成分の名前です。
風邪薬、頭痛薬、生理痛の薬などは、同じ解熱鎮痛成分が含まれていることが多いです。「成分・分量」の欄を見て、同じ成分名が書かれていないかを必ずチェックしましょう。
用法・用量:回数・間隔・期間を守れているか
・「何日間まで使ってよいか」
・「服用間隔は何時間空けなければいけないか」
飲む量や回数は確認していてもまで見ていない方もいるので、よく確認しましょう。
数日使っても症状が改善しない場合は、薬を変えるのではなく受診の目安と考えましょう。
現在服用中の薬:処方薬・サプリも含めて確認
病院から処方された薬がある場合は、必ず市販薬との併用可否を確認してください。
また、見落とされがちですが、漢方薬や健康食品、サプリメントも成分が重なることがあります。
「これは薬じゃないから大丈夫」と自己判断せず、不安があれば薬剤師に伝えるのが安全です。
持病の有無・妊娠中・授乳中かどうか
市販薬は「誰でも使える薬」ではありません。
高血圧、心臓病、腎臓病、肝臓病、喘息などの持病がある場合、避けるべき成分が含まれていることがあります。
また、妊娠中・授乳中は、使用できる薬が限られます。
説明書の「高血圧の方は避けてください」「妊娠中の方は避けてください」といった記載の有無を、必ずチェックしましょう。
過去に薬で副作用が出たことがあるか
以前に、薬を飲んでかゆみや発疹、気分不良、息苦しさなど、体調を崩した経験のある場合は要注意です。
同じ成分や類似成分を含む市販薬で、再び副作用が起こる可能性があります。
「昔のことだから」と軽く考えず、心当たりがあれば必ず購入前に相談しましょう。
こんなときは薬剤師・医師に相談を

画像:患者の相談を受ける医師(photo-AC)
市販薬は手軽に購入できるため、「このくらいなら自分で何とかしよう」と思いがちです。
しかし、実際には相談したほうが安全で、結果的に早く症状が楽になるケースも少なくありません。
特に次のような場合には、ぜひ薬剤師や医師に相談しましょう。
どの市販薬を選べばいいかわからないとき
服用後に体調の変化(違和感・不快感)を感じたとき
症状が長引いているとき
自己判断で服用量や期間を変えたくなったとき
妊娠中・授乳中・持病がある場合
市販薬は「安全か危険か」で考えるものではなく、「使い方で安全にも危険にもなる薬」です。
また市販薬は「弱い薬」ではなく、正しく使ってこそ安全に役立つもの。「このていどで相談していいのかな?」と遠慮せず、気軽に専門家へ相談してくださいね。
※本記事は専門家による執筆ですが、あくまで一般的な見解です。個人の体質や生活習慣などによって推奨の可否が異なりますので、最終的な判断はご自身の責任でお願いいたします。
◇記事の構成・編集/(salvia編集部)
◇執筆:渡辺ユリ/薬剤師(クリニック門前薬局・面薬局勤務、OTC販売)