※この記事は薬剤師の方に質問し、その回答を元に執筆されています。
はじめに「OS-1の成分を確認」

経口補水液とは、水にナトリウムやカリウムなど(塩分)の電解質と糖分をバランス良く配合した飲み物のことで、「ORS(Oral Rehydration Solutio)」と呼ばれています。
清涼飲料水のスポーツドリンクより水分と塩分の吸収に優れ、体が脱水状態のときは経口補水の摂取が推奨されているのです。
市販されている経口補水液(ORS)で有名な商品は、大塚製薬の「OS-1(オーエスワン)」。経口補水液を手作りする前に、OS-1の材料を整理してみました。
OS-1の原材料は以下のとおり。
ブドウ糖(国内製造)、果糖、食塩/クエン酸(Na)、塩化K、リン酸Na、塩化Mg、甘味料(スクラロース)、香料
上記のことから、OS-1は糖分と塩分などからできていることがわかります。
この糖分と塩分の組み合わせは、医学的知見から配合されており、水分を効率的に体内に吸収するために重要な役割を担っているのです。
またそれぞれの役割も確認してみましょう。
■塩分
大量に汗をかくと水だけでなく塩分も体内から出ていきます。そんなときに水だけを飲むと体液が薄まってしまい、体は余分な水分を排出しようとするのです。水だけではかえって脱水が進行してしまうので、塩分の摂取が重要ということがわかります。
■ブドウ糖
ブドウ糖は果物やハチミツなどに含まれており、生き物にとって必要不可欠なエネルギー源です。このブドウ糖と、食塩に含まれるナトリウムを一緒に摂取することで、小腸で⽔分や電解質が吸収されやすくなります。
■ブドウ糖+果糖
砂糖は、ブドウ糖分子と果糖分子が一つずつ繋がった「ショ糖」が主成分です。そのため、OS-1に含まれる「ブドウ糖+果糖」は、砂糖で代用できることがわかります。
市販されているOS-1の材料や成分をふまえたうえで、作り方の実践を解説していきます。
500mlの経口補水液を作ってみよう
撮影:渡辺友里佳(薬剤師)
◆材料:500ml分
・水 500ml
・砂糖 20g
・塩 1.5g
<作り方>
1.水に砂糖と塩を入れます。

撮影:渡辺友里佳(薬剤師)
2.よく混ぜて溶かします。

撮影:渡辺友里佳(薬剤師)
<ポイント>
小腸で水分や電解質を効率よく吸収させるためには、ブドウ糖とナトリウムのバランスが重要です。そのため、計量は正確におこないましょう。
なお、ペットボトルのキャップやプラスチックスプーンを使えば、自宅の外でも簡単に計量ができるため、緊急時に役立ちますよ。
・砂糖 ペットボトルのキャップですり切り3杯
・塩 コンビニやスーパーでもらう透明プラスチックスプーンのすり切り1杯、または、親指・人差し指・中指の3本の指でひとつまみ
200mlで作る方法
経口補水液は200mlでも作ることができます。200mlで作る場合の分量は以下のとおりです。
◆材料:200ml分
・水 200ml
・砂糖 9g(大さじ1)
・塩 0.6g(軽くひとつまみ)
作り方は、500mlの場合と同様です。500mlだと多い人や、1回分だけ作りたいときにも便利です。
保存方法
手作りの経口補水液は雑菌が繁殖する可能性があるため、冷蔵庫で保管しましょう。冷蔵庫の適正温度である約2〜6℃で保存することが望ましいです。
保冷剤やクーラーボックスを使用すれば持ち運びができます。ただし使用するペットボトルや容器は清潔なものを使いましょう。なお金属製の水筒に入れると経口補水液の塩分で金属が錆びてしまう可能性があるため、注意が必要です。
日持ちはどのくらい?
手作りの経口補水液は、当日中に飲みきるようにしましょう。翌日以降は雑菌が繁殖し、健康を損なう可能性があるので、翌日の分は再度作りなおしてくださいね。
飲みやすくするアレンジ4選

経口補水液は塩分が多く糖分が少ないため、「飲みにくい味」と感じられることが多いものです。また好みや体調によって、砂糖を控えたい人もいれば、「まずくて飲めない」という人もいます。
そこで経口補水液を、飲みやすくするアレンジ方法をご紹介します。
1.はちみつを使う
◆材料:500ml分
・水 500ml
・はちみつ 大さじ1〜2
・塩 1.5g(小さじ1/4)
・レモン果汁 25ml
はちみつにはビタミンやミネラルなどの栄養素が多く含まれる一方、同量の砂糖に比べてカロリーが低いのが特徴です。砂糖よりも甘さを感じやすいため、ダイエット中の方にもおすすめできます。
また、砂糖が二糖類である「ショ糖」を主成分とするのに対し、はちみつは単糖類である「ブドウ糖」と「果糖」が主成分です。単糖類はすぐにエネルギーに変換されやすいため、はちみつ入りの経口補水液は疲れている方や体力のない方にも適しているでしょう。
ただし、はちみつで作った場合は1歳未満の赤ちゃんに飲ませてはいけません。はちみつにはボツリヌス菌という菌が含まれており、乳児ボツリヌス症を発症する危険性があるからです。
2.リンゴ酢を使う
リンゴ酢を入れて経口補水液を作るのもおすすめです。リンゴ酢に含まれるクエン酸が、イオンやブドウ糖の吸収を高める効果もあります。水、砂糖、塩で作った経口補水液に、リンゴ酢を小さじ3〜4杯ほど入れるとよいでしょう。
リンゴ酢が無い場合はリンゴジュースを加えてもよいですよ。しかし、リンゴジュースには糖類が多く含まれているため、砂糖の分量を小さじ1杯程度減らしましょう。
3.砂糖なしの作り方
手作りの経口補水液なら砂糖なしで作ることもできます。その際、砂糖の代わりにリンゴ酢やレモン果汁を入れるのがおすすめ。糖尿病や高血圧症、脂質異常症などの持病を持っている方や、ダイエット中で糖質が気になる方にもぴったりです。糖質量を調整できるのは手作りのメリットですね。
またブドウ糖単体を使う方法もあります。ブドウ糖を使用することで、水分の吸収率を下げることなく糖質を約60%程度カットできますよ。ブドウ糖はドラッグストアやスーパーなどで手に入るので、試してみてくださいね。
ブドウ糖を使う場合の分量は以下のとおりです。
◆材料:500ml分
・水 500ml
・ブドウ糖 9g(大さじ1)
・塩 1.5g(小さじ1/4)
4.レモンなしで作る方法
酸っぱさやレモンが苦手、という方はレモンなしで経口補水液を作りましょう。レモン果汁を入れることでクエン酸やカリウムなどの栄養素を摂取できますが、苦手な方は無理に入れる必要はありません。
また、レモンを入れたいけど家に無いという場合は、グレープフルーツ果汁でも代用できます。果汁を多く入れすぎてしまうと吸収が悪くなるため、加える量は少量(約5%)にしてくださいね。
ケース別|経口補水液の飲み方

熱中症
汗をかくと、水分だけでなく塩分も体から出ていきます。経口補水液は汗の塩分濃度と同等の 0.3%の塩分を含み、体内に塩分を効果的に補給できます。
こむら返りや立ちくらみ、めまい、止まらない発汗など熱中症の症状があったら、経口補水液500mL〜1000mLを目安に無理のない速さで飲みましょう。その後は、ゆっくりと飲みながら様子を見てください。
胃腸炎
胃腸炎による嘔吐・下痢の場合、体内から大量の水分が排出され、脱水症状を引き起こす可能性があります。このような軽症から中等症の脱水には、経口補水液が推奨されています。
嘔吐や下痢によって排出される体液には、水分だけでなく塩分も多く含まれています。そのため、塩分と糖分がバランスよく含まれる経口補水液を摂取することで、脱水症状の予防・改善につながるのです。最初はスプーン1杯程度の少量からでかまいませんので、様子を見ながら少しずつ飲むようにしてください。
風邪
風邪をひくと、熱や嘔吐、下痢など水分を失いやすい状況となります。経口補水液は風邪の根本治療にはなりませんが、症状の悪化や脱水症状を防ぐ働きがあるので、こまめに少しずつ飲むようにしましょう。
二日酔い
二日酔いは、アルコールを分解する際にできるアセトアルデヒドという成分が原因で起こります。このアセトアルデヒドを体外へ排出するためには水が必要であり、体内の水分が足りないと二日酔いになりやすくなります。
またアルコールには利尿作用があり、飲酒量以上に水分が排出されます。そのため、経口補水液による塩分・水分の摂取が重要なのです。
経口補水液にまつわる疑問を解説

「おいしいと感じたら熱中症になりかけている」って本当?
経口補水液は体内に吸収されやすい塩分・糖分のバランスで作ってあるため、飲み物として「おいしい」と感じる方は少ないものです。しかし、脱水状態のときは体内の水分や電解質が足りておらず、経口補水液を「甘い」「おいしい」と感じる可能性があります。ただし、味の感じ方は好みにもよるため、おいしいからといって飲み過ぎないようにしましょうね。
何歳から飲んでいいの?
経口補水液は母乳やミルクが飲めていれば服用できますが、事前に医師に相談することをおすすめします。
妊婦は飲んでいいの?
妊娠中の経口補水液の服用は、脱水予防に効果的です。特につわりの嘔吐時や食欲不振のときには脱水になりやすいため、経口補水液を少量ずつ服用して水分を補給しましょう。くれぐれも飲み過ぎないようにご注意を。
高血圧の人は?
経口補水液には、ナトリウムやカリウムが多く含まれているため、血圧が変動する可能性があります。高血圧の人でも軽度から中等度の脱水症になった際には経口補水液の使用が推奨されますが、事前にかかりつけの先生に相談しておきましょう。
糖尿病の人は?
経口補水液500mlにはブドウ糖が約9g含まれています。頻繁に飲むと血糖コントロール不良になってしまう可能性があるため、服用は脱水時限定で。事前にかかりつけの医師に相談することを推奨します。
凍らせると効果はなくなる?
凍らせても組成に変化はないため、効果はあります。服用するときは完全に溶かして飲むか、一口サイズの製氷皿で凍らせたものをそのまま服用してください。ペットボトルのまま凍らせると容器が破裂する可能性があるため、別容器に移して凍らせましょう。
ポカリスウェットやアクエリアスとの違い
コンビニでも販売しているアクエリアスやポカリスウェットなどのスポーツドリンクも体液に近い浸透圧になっており、水分が体内へ素早く吸収されます。しかし、飲みやすくするために経口補水液と比べて塩分が少なく糖分が多い組成になっているのが特徴です。
基本的にコンビニでは売っていない!

OS-1は一般的なコンビニでは販売しておらず、ドラッグストアや薬局で売られています。ただし病院内に設置されたコンビニでは購入することができます。
OS-1の製品には500ml、300ml、アップル風味500ml、アップル風味300ml、ゼリー200g、パウダー30g(1L用)、15g(500ml用)があります。
・通常のOS-1の味が苦手な方→アップル風味を試してみるとよいでしょう。
・外で携帯したい方→500mlだと量が多いという方は、300mlのペットボトルが便利です。
・飲みやすさを求める→OS-1ゼリー1パウチ(200g)は液体タイプ200mlと同等の効果です。ゼリー状で飲み込みやすい物性のため、嚥下困難な場合に適しています。
・緊急用に常備したい→パウダータイプは出先で急に必要になったとき、水に溶かすだけで飲めるため持ち運びに適しています。500mlペットボトルの水があれば簡単に作れますよ。収納場所にも困らないため、緊急用として家に常備しておいてもよいですね。
和光堂から販売されている「アクアライトORS(オーアールエス)」はOS-1に比べて飲みやすい味になっており、乳児や幼児の脱水の予防や改善に用いられますが、こちらも基本的にコンビニで見つけることは難しいでしょう。
OS-1とアクアライトORSは、消費者庁から個別評価型病者用食品として許可を受けた経口補水液です。販売場所に制限はありませんが、コンビニで扱われないのは、年齢や持病に合わせて飲み方を注意する必用があるからでしょう。
OS-1やその他経口補水液を確実に買いたい場合は、医師や薬剤師、看護師、管理栄養士などの専門家からアドバイスを受けられる売り場を訪れるとよいですよ。
経口補水液が買えるのは、ドラッグストアや薬局、また薬剤師・登録販売者のいる店舗ならドンキ・ホーテで購入できることもあります。その他、即日手に入れることは難しいものの、通販でも購入できますよ。
しかし、コカ・コーラシステムの「アクエリアス 経口補水液ORS(オーアールエス)」は、コンビニで買うことができます。こちらもOS-1やアクアライトORSのように、特別用途食品 個別評価型病者用食品として、消費者庁より許可を受けている商品。

電解質とブドウ糖の配合バランスを考慮されており、飲みにくい経口補水液を「アクエリアス」ならではの風味で飲みやすく演出した商品です。含まれているナトリウムはOS-1よりも少なく、OS-1のナトリウム『115mg/100ml』に対して、アクエリアス経口補水液ORSは『98mg/100ml』。
「アクエリアス」というブランドイメージから、スポーツドリンクと誤解する人もいるかもしれませんが、「経口補水液 アクエリアス ORS」は病者用食品として表示許可を得た製品です。体の状態に沿った方法で摂取する必要があり、予備知識なく清涼飲料水のようにガブガブ飲むのは避けましょう。
飲み過ぎるのはNG

コンビニで手軽に買えないことから、経口補水液が一般的な飲み物とは違うことがわかります。自宅で簡単に経口補水液が作れて、飲みやすくアレンジできるとはいえ、飲み過ぎは禁物です。経口補水液はあくまでも「病者用食品」であることを理解したうえで、飲用しましょう。
なお、健康な状態で経口補水液を大量に飲み過ぎてしまうと、ナトリウムの過剰摂取や血圧や血糖値の上昇を引き起こす可能性があります。1日の摂取目安量を参考に、飲みすぎないようにしてくださいね。
OS-1の1日の摂取目安量は、下記のとおりです。
※脱水状態によって適宜増減します。
・学童〜成人(高齢者含む):500〜1000mL(g)/日
・幼児:300〜600mL(g)/日
・乳児:体重1kg当たり30〜50mL(g)/日
ちなみに、スポーツドリンクでも、体調や状態によっては飲みすぎると高血糖状態となり、吐き気や腹痛などを引き起こすこともありますよ。
◇記事の構成・編集/(salvia編集部)
◇元原稿・情報提供・撮影/渡辺ユリ/薬剤師(クリニック門前薬局・面薬局勤務、OTC販売)
*記事中の提供以外の画像はイメージです。